筋肉が「凝る」原因や感じ方の違いには、いくつかの要因が関わっています。以下にその理由を分けて説明します。
1. 筋肉の緊張と血行不良
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凝り(コリ)の原因
筋肉が長時間緊張していると、筋線維が収縮しっぱなしの状態になります。これにより血流が悪くなり、酸素や栄養の供給が減少。老廃物がたまることで炎症が起こり、コリを感じることがあります。筋肉が緊張する多くの理由はストレス(肉体的、精神的)によるものです。
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張りの原因
運動後の乳酸や疲労物質の蓄積、または筋肉の一時的な硬化(ポンプ作用不足)によって、筋肉が膨らんだような張り感が生じます。
2. 感覚の違い(痛み、くすぐったさ、無感覚)
筋肉を押されたときの感覚の違いは、神経の働きと感覚受容器の種類に関係します。
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痛い
圧を加えると痛みを感じる場合、筋膜や筋肉が炎症を起こしているか、筋繊維の微細な損傷がある可能性があります。これにより痛みを感じるセンサー(侵害受容器)が刺激されます。また、筋肉に溜まった乳酸や老廃物が発痛物質に変化することで痛みが起きることもあります。
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くすぐったい
筋肉や皮膚の表層部にある触覚受容器が刺激を受けると、くすぐったさを感じることがあります。これは深層の問題ではなく、表層の緊張や感覚過敏が原因です。
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何も感じない
感覚が鈍くなっている場合、局所の血行不良や神経圧迫による感覚麻痺、もしくは長期間の緊張による神経反応の鈍化が考えられます。
3. コリの種類と凝り固まりの違い
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柔らかいコリ
筋肉の疲労や血行不良により生じたもの。押すと比較的柔らかく、適切なマッサージで早く解消します。
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硬いコリ
長期間にわたる緊張や姿勢不良によって、筋肉が慢性的に固まった状態。筋肉内部に硬結(硬い「しこり」)ができることもあります。さらに緊張が続きますと、エネルギー不足を起こし、硬結がトリガーポイント化します。トリガーポイントは押すとズーンと響くような痛み(関連痛)が広がり、慢性痛や可動域制限の原因になります。硬結やトリガーポイントができる背景には、筋肉や筋膜の繊維同士の部分的な癒着・滑走障害が強く関与しています。
4. なぜ感覚や硬さが違うのか
筋肉の状態や個人の体質、血流量、神経の働き、ストレスなどが複雑に絡み合っています。
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血流量による差
血行が良ければ筋肉は柔らかく、悪ければ硬くなりがち。
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神経の過敏度
ストレスや疲労が溜まると感覚神経が敏感になるため、痛みやくすぐったさを感じやすくなります。
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個人差
筋肉のつき方や日常生活のクセ、過去の怪我や病歴によって、同じ刺激でも感じ方が異なります。
5.どう対応すれば良いか?
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軽いコリ
柔らかいコリが多く、軽いストレッチやマッサージ、温めることで解消。
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慢性的なコリ
硬いコリになることが多く、専門的な施術(整体や鍼治療など)を受けるのが得策。ストレスに気をつけ、悪い習慣を見直すようなことが必要。セルフケアの習慣化(ウォーキングやストレッチなど)。疲れや筋肉の回復には、こまめな水分補給や深い呼吸を日頃から心掛ける。栄養と睡眠も非常に大事。とにかく血流をよくすることがポイント。
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感覚の異常
継続的な痛みや麻痺がある場合は、神経や血管の問題が関係している可能性があるので、まずは医療機関で相談するのが良いでしょう。
6. 痛みの原因 補足
痛みの原因として、乳酸や老廃物が発痛物質に変化することについて。
乳酸や老廃物の役割
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乳酸の生成と痛みの関連
- 筋肉が疲労すると、エネルギー源であるグリコーゲンが分解され、乳酸が産生されます。
- 乳酸そのものはすぐにエネルギーとして再利用されるため、直接的に痛みを引き起こすことは少ないとされていますが、蓄積することで局所的な酸性化(pH低下)を引き起こします。
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酸性化による発痛物質の生成
- 酸性化により、ブラジキニンやプロスタグランジンなどの発痛物質が生成されます。これらの物質は、痛みを感じる神経(侵害受容器)を刺激します。
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老廃物の蓄積と慢性的な痛み
- 老廃物(代謝産物)が筋肉や周辺組織に溜まると、炎症が慢性的に続く場合があります。この炎症が神経を刺激し、持続的な痛み(鈍痛)や違和感を生じさせます。
発痛物質の例とメカニズム
発痛物質は、局所の血流不全や筋肉の緊張によって生成されることが多いです。
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ブラジキニン
血管の拡張や神経の過敏化を引き起こします。これにより、痛覚が増幅されます。
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プロスタグランジン
炎症反応を強化し、痛覚受容体を敏感にします。これにより、軽い刺激でも痛みを感じるようになります。
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ヒスタミン
血流を一時的に増加させますが、神経を刺激して痛みやかゆみを引き起こす場合もあります。
慢性痛と乳酸の誤解
乳酸自体は筋肉疲労や痛みの「副産物」として注目されがちですが、最近の研究では乳酸そのものが痛みの直接的な原因ではないという見解が増えています。むしろ、
- 酸性環境そのもの(pH低下)
- 発痛物質の生成
が痛みの主要因であると考えられています。
対処の仕方
とにかく発痛物質を速やかに取り除くことです。体内の循環(血液・リンパ・間質液)を促進することが最も基本で効果的です。発痛物質が炎症や損傷部位に蓄積して痛みを引き起こします。
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十分な睡眠
発痛物質をスムーズに取り除くには睡眠が一番。
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体液循環を改善する
温熱療法やマッサージで血流を改善すると、乳酸や老廃物が効率よく排出され、発痛物質の蓄積を防ぎます。
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水分をしっかり摂る
血液や間質液の流動性を保つために1.5〜2L/日を目安に。
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抗炎症作用のある食品・栄養素を摂る
EPA・DHA(青魚)、ビタミンC・Eなどが有効。
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自律神経の調整
自律神経のバランスを整えることで、筋肉の過剰な緊張を防ぎ、痛みを軽減します。
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酸性体質を緩和する
発痛物質は「酸性環境」で活性化しやすく、果物や野菜を中心に多く摂るとよい。重曹クエン酸水も効果的。
乳酸や老廃物が間接的に痛みに関与するメカニズムは、主に酸性化と発痛物質の生成にあります。
ただ筋肉をほぐすだけでなく、血流やリンパの循環を意識することで、より効果的に痛みを和らげられるでしょう。